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スマホ人生(その3) [巷のいのち]

スマホ人生(その3)

 

 先日4年がかりで漸く1冊の本を読み終えた。ドストエフスキー作(工藤精一郎・訳)『罪と罰』である。と言っても、途中までは原語のロシア語版を並行して読み進め、全体の2割付近でついに原語版の通読を放棄した、曰く因縁付きの本である。この本を読みながら驚いたことが一つある。登場人物名の殆どがスマホに登録されていることだ。老人の読書が、それによって幾たび救われたことだろう。何年もかかったせいもあるが、劣化した記憶力ではこの登場人物が誰だったのか、思い出せないことがたびたびある。そんなとき駄目もとで偶々スマホに訊いてみたら、ズバリ正解が返って来た。例えば、アレクサンドル・グリゴーリエヴィッチ・ザミョートフ ― 彼は一介の警官で、端役中の端役であるのに拘わらず、スマホはきちんと教えてくれた。

 近年コロナ蔓延と無職人生に更に老人暮らしが相俟って人との出会いが激減、いきおい本に向き合う時間が増えると、やたら知らない言葉が目に付きだした。半生の不勉強の賜物だが、中には記憶から逃げ出したのもありそうである。で近年殊更スマホの検索機能のお世話になっている(直近の例は、『卒啄同時(そつたくどうじ)』、『DX』)。スマホが対応する言語は日本語に限らない。別途言語の追加設定をする限り、どうやら主要な外国語は何でもござれのようなのだ。僕の場合、例えばロシア文字でДо Свиданяと入力すれば、「さようなら」が表示され。それがもし難しい用語なら、ロシア語のウイキペディアの出番となる。

 かくして我が人生スマホとは切っても切れぬ関係に相なって、くぐもる唸り声耳にするたび、ついつい開き見る癖がついた。いずれがいずれを支配しているのか、心許ない点はあるけれど、敢えてポジティブに捉えれば、どでかい図書館をまるごとポケットに入れてるようなもの。草葉の陰のご先祖には、きっと想像もつかないことだろう。そして今日も布団に入ったあと、スマホ開いて見落とし無いことを確かめ、アラームを入れて、そして目を閉じて、一日を終わるのだ。

 写真は、小学校の校庭に咲く八重桜。昨日の日曜は校庭の解放日だったので、遊ぶ親子をこの樹下に座って終日見守った際、スマホで撮ったものである。

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2024422日)


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