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スマホ人生(その2) [巷のいのち]

スマホ人生(その2)

 このまま吸い続ければ肺気腫が嵩じて、あなた、死ぬより苦しむことになりますよ、と医者に言われて煙草を捨てたのが62歳の時だった。以来77歳まで15年間、肺に良かれと有酸素運動のためもあり週末、山歩きに勤しんだ。山に入れば自然だけが相手、そのうち慣れぬデジカメを持ち歩いて、富士山やら綺麗な花等撮り始めた。山歩きの最後の頃はスマホがデジカメに置き換わった。スマホには、撮った花の名前を示唆する識別機能があることに気付いたからだ。それまでは花の名前なぞ、梅、桜、タンポポ等両手の指ほども知らなんだ。

 この識別機能が、しかし草木に限らずもっともっと広範囲に亘ることに気付いたのは、山歩きをやめたつい最近のことである。コロナが流行り始めた春、王子稲荷神社を訪れると狐の石像がマスクをしていたので、社殿を背景に思わずスマホに収め、何気なく「レンズ」に触ったら、王子稲荷神社と出るではないか!先月は皇居を歩く機会に見知らぬ建物二つを撮ったら、「宮内庁」と「東京国立近代美術館」、いずれも正解だった。また今月に入りアパートのベランダで見つけた超早生まれの蝉は「油蝉」- これまた正解なのだ。

 こないだは帰宅する学童を引率するために立ち寄った小学校の校庭の木に、見慣れぬ淡紅色の花が咲いていた。木肌は真夏に咲く百日紅(さるすべり)に似るが季節も色も全く違う。そのときスマホが囁いた、「花梨(かりん)よ」。

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2024420日)

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スマホ人生(その1) [巷のいのち]

スマホ人生(その1)

  スマホをいつから持ったのか、もはや確たる記憶も失せているけれど、爆発的に普及し始めたのが2009年ということは、既に高齢者に仲間入りしていたことは間違いない。しかもその後の機能の進化が多面に亘り且つ凄まじかったために、メカにさえ弱い老人はなんとか見よう見真似で使ってはいるが、触れ得る機能はほんの一部だけ、あとは宝の持ち腐れのまま後期高齢の道標も越えて4年が過ぎた。

 そして今、気が付いたら己が日常はスマホの天下。朝スマホに起こされると、アラームを解除して画面に目を通す(誰かからメールかラインが来てないか?フェイスブックの投稿に「いいね」やコメントが来てないか?)。今日の天気もスマホに訊けばよい。

 都会のアパート暮らしは、隣は何をする人ぞ?まして4年前、最後の職場を去ってからは世間との接点も喪失、家族以外と接触する機会も滅多には無くなった。遠い故郷との親戚付き合も、母亡きあとは絶えてない。例外はある。幾星霜を経て今に残る、一握りの、ほんの一握りの友人たち。年ふるにつれ彼らとの出会いもまた激減する一方だが、スマホあればこそメールやラインで互いの消息を確認し合うことができる。

てな調子で一事が万事、家の中でさえスマホを離さない。着信音を耳にすると気になって、すかさず開いて確かめる。開いても、大抵は何で鳴ったか分からない(知らない機能のいずれかが反応したようだ)。東京も今こそ春爛漫、桜は散って葉桜になったが、今度はツツジが咲き始めた。アパートの庭に咲き出した花は、いずれがアヤメかカキツバタ?翳したスマホの言うことにゃ、アヤメだとさ。

 

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2024419日)


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