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ふるなじみ(その3) [巷のいのち]

ふるなじみ(その3)

 桜の蕾が膨らむ頃、久し振りに電子書籍の『罪と罰』に向き合う。物語は、もと学生の極貧の主人公ラスコーリニコフが、同じように極貧の、家族のため春をひさぐ娘のソフイアと運命的な出遭いを持つあたり。舞台はロシアの都ペテルブルグの、暗く猥雑な裏町。知らない単語に出遭う都度電子辞書を引いて結果を単語帳に記入しつつ、ときに工藤精一郎・訳『罪と罰』を参照する。そんな、ロシア語に対峙する姿勢は60年前の学生時代のものと些かの変化もないが、ただ決定的に違うのは、時の流れに当時と今では雲泥の差異があることだった。

 桜が花開く頃になって、とうとう心に決めた、この先は原文を離れ和訳専一で筋を追うことを。今から先の人生は、別れが一杯待っている。ロシア語との別れはその一つに過ぎない。そしてついに、僕には長かったラスコーリニコフの物語も終った。彼が金貸し老婆殺しを自首して出た結果シベリア送りになると、ソフィアも彼を追ってシベリアへ・・・。

 しかし、ふるなじみはいいものだ。これからは片意地張らぬまま、ロシア語に触れたい時は目で追って、聞きたい時は耳を澄ます、そんな風に過ごせたらと思うのだが・・・。

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2024415日)

 


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