正義の戦争は嘘だらけ(渡辺忽樹/福井義髙) [読後感想文]
正義の戦争は嘘だらけ(渡辺忽樹/福井義髙)
ウクライナの戦争に関するあるテレビ番組で、コメンテーターの二人が揃いも揃って妙なことを言うので、思わず首を傾げた。プーチン(ロシア)が悪者でゼレンスキー(ウクライナ)が正義の味方だと単純に思い込むのは危険だと、繰り返し主張するのだ。強い違和感を覚えた。何故なら、ここ半年以上ロシアの砲弾に破壊されたウクライナの街を見続けて来たし、メディアはこぞってブチャ等におけるロシアの残虐行為を報道して来たからだ。
何とも割り切れない思いのまま、番組で紹介していたコメンテーター二人の対談集「正義の戦争は嘘だらけ(渡辺忽樹/福井義髙)」を図書館から借り出して読み始めた時は、二人はもしかして今どき珍しい親プーチン(ロシア)派の学者ではないかと疑っていた。だが、読むにつれ、とんだ誤解だったことを思い知る。それはともかく、著者たちの次のような見解には目を剥いた:
♢ウクライナ戦争の影の(真の)仕掛け人はアメリカのネオコン(極右勢力)で、ゼレンスキーは意のままに操られているに過ぎない。
♢ブチャにおける民間人虐殺等に関する日米欧の報道は、プロパガンダの可能性が強い。
♢欧米が報道するプーチンはまるでスターリンの再来だが、プーチンは極めて合理的な人間である。
♢プーチンがウクライナ侵攻の口実とした「ウクライナ東部のロシア系住民に対する迫害」は実際に存在した。
上記のような見解は、日々見聞きする報道や見慣れた識者の見解とは真逆ゆえ俄かには信じ難いが、著者たちはスペイン内戦から二つの大戦を経て今に至る近現代の戦争史を踏まえ(日本がアメリカのフランクリン・ルーズベルトに戦争を仕掛けられたことも含め)、警鐘を鳴らしている。この人生、残り時間こそ少なけれ、今暫し老眼凝らし見詰めてみようか、天下の情勢を。
いつの間にか晩夏も過ぎ、あんなに喧しかった蝉の恋歌がぴたり止まった。今日、いつもの散歩路の草叢に小さな朝顔を見付けた。とても可憐な花だった。
(2022年9月17日)