SSブログ

門田隆将の世界(この命、義に捧ぐ) [読後感想文]

門田隆将の世界(この命、義に捧ぐ)


 


ノンフィクション『この命、義に捧ぐ』(門田隆将)を読んで、本当にこんな人がいたのかとびっくらこいた。1945年の終戦時満州の駐蒙軍司令官だった根本博・中将のことである。終戦時の満州では天皇の終戦の詔勅に従い、侵攻してきたソ連軍を前にして関東軍が武装を解除、ために在留邦人は掠奪、強姦等の苦難に遭い、60万人の兵がシベリアに抑留された、と思い込んでいた。だが、それは必ずしも正しくはなかった。根本が指揮する内蒙古・新疆の兵に限っては武装解除に応じず、ソ連軍に徹底抗戦、結果(昨日の敵であった蒋介石の国府軍の理解もあって)内蒙古の在留邦人4万人と35万人の兵を無事帰国させることができた。それは第1に根本が、ソ連軍の暴虐な本質と危険性を知悉していたこと、第2にそんなソ連軍から邦人と部下を守り抜くことこそが、最も重要な使命だと信じていたせいだった(77年前の日本を思う時、それってとんでもない発想ではあるまいか?)。


それよりもっと驚いたのは、終戦4年後の彼の行動である。終戦時に国府軍(蒋介石)から受けた恩に報いるために1949年、GHQ占領下の日本から台湾に密航し、国府軍の対共産軍戦争に加担。その時は国府軍が共産軍に連戦連敗、本土から台湾に逃げ込んだ頃で、余勢を駆った共産軍は台湾の離島「金門島」にまで上陸して来た。ここで採られたのが根本が提案した対抗作戦で、結果、共産軍の上陸兵は殲滅され、以来中国と台湾は睨み合ったまま今日に至る。


今、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に中国による台湾進攻の懸念が喧伝され始めている。だが、もし根本一人がなかりせば、台湾は70年以上も前に中国に組み込まれた可能性が高く、さすれば今さら台湾有事は日米の有事と騒ぐこともなかっだろう。


なあ友よ、根本博って凄くない?いかにノンフィクションとはいえ本は本だから、多少の誇張や修飾はあるだろう。しかしもし仮に『この命、義に捧ぐ』がすべて夢だとしても、門田隆将に文句は言えない。だってこんなに素晴らしい夢を見さしてもらえたのだから。


IMG20220831114133.jpg


2022910日)

nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:日記・雑感