曼殊沙華 [巷のいのち]
曼殊沙華
去年の今日、「秋立ちぬ」と題してアパートの庭に咲き始めた彼岸花、またの名曼殊沙華を紹介した。そのことを思い出し、玄関を出てアプローチの敷石を進みつつふと足元を見て歩を止めた。殆ど透明な羽根に淡い空色の胴体、子供の頃よく見かけた塩辛蜻蛉だ。そいつを避けて廻って庭に踏み入ると、嗚呼、今年も秋を先駆ける赤い蕾の、中には待ち切れず赤い花、白い花を開いて、四囲に雄しべ雌しべをいっぱい差し伸べた曼殊沙華。日中の外気は未だ30度を超えるのに塩辛蜻蛉に曼殊沙華はどこか秋の気配・・・と思って帰って早速報告すると、彼岸花ねえ、墓場の花なのにわざわざ庭に植えるなんて、と女房殿はにべもない。
その時何故か思い出した。数年前、女房と二人埼玉県の飯能の奥へ彼岸花を観に行った。西武池袋線を高麗駅で降りて、歩いた先の巾着田、何とそこには500万本の曼殊沙華が咲き乱れていた。ネットを見ると今年も今は、曼殊沙華祭りの真最中。数年ぶりにそろそろ訪ねてみるかと思いつつ日記を紐解くと、彼の日は2014年9月23日(秋分の日)。げっ!もうひと昔も前のことだった。
(2023年9月21日)