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ワンダー(R.J.パラシオ) [読後感想文]

ワンダー(R.J.パラシオ)

 10カ月前パソコンでアマゾン・プライムの無料映画「ワンダー君は太陽」(2017年米国制作)を観て、主人公が奇形な顔を持つとても変わった映画なのに凄く感動したことがあった。その後、映画には原作の小説「ワンダー」があることを知り、図書館から翻訳本を借り出した(読み終える頃に英語の原作も借りたが、これは読むためではなく、最初と最後の原文のニュアンスを知りたいと思ったためだった)。

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 小説そのものが特異な形式で、主人公オーガスト(愛称オギー)を含む子供5人の独白から成り立っている。オーガストは奇形な面相ゆえに、小学校には行かないでいたが、10歳の齢に漸く通学を始める。それからの1年に起こる様々な出来事が、オーガストや姉、同級生たちそれぞれの視線から独白形式で語られる。

 学校でオーガストを見るほとんどの生徒はぎょっとなって遠ざかり、それを敏感に感じ取る本人もまた鋭く傷つく。そんなオーガストが最も安らぎを覚えるのは、生徒全員が仮装に身を包むハロウイーンの日だった。色々な出来事を経るうちに、オーガストとも心を通じ合える友達がいくたりか出来たが、大部分はなおよそよそしいままだった。そのうち、オーガストの特異な容貌が原因で他校の上級生グループとオーガストの僅かな味方の間で喧嘩が始まると、なんとそれまでオーガストを避けていた同級生までもが加勢に駆けつける。

 物語を締め括るのは、一年後の終業式。式の終わりに校長先生から、今年の学業とスポーツのそれぞれで模範的だった生徒の名前が発表されたあと、最後に、その行動で最も多くの者を魅了した最優秀賞の対象にオーガストの名前が発表されると、生徒、教師、来賓の全員が起立、割れんばかりの歓声に包まれた。

 物語の出だしは、オーガストのセリフで始まる、「自分がふつうの十歳の子じゃないって、わかってる(I know I`m not an ordinary ten-year-old kid)。(中略)もしも魔法のランプを見つけて、ひとつだけ願いをかなえてもらえるなら、めだたないありきたりの顔になりたい(If I found a magic lamp and I could have one wish, I would wish that I had a normal face that no one ever noticed at all)

 そしてエンディングもまたオーガスト、「『ありがとう、オギー 』ママはそっと言った。『なにに?』『オギーがママたちの人生にくれた、すべてのものに。うちの家族に生まれてきてくれて、ありがとう』ママはかがみこみ、ぼくの耳元にささやいた、『オギーはほんとうに奇跡。すばらしい奇跡』」(“Thank you, Auggie,”she answered softly. “For what?” “For everything you’ve given us,”she said. “For coming into our lives. For being you.” She bent down and whispered in my ear. “You really are a wonder, Auggie. You are a wonder.”

 原作が米国で出版されたのは2014年、以来世界で600万部以上が売れたという。「ワンダー君は太陽」として映画化されたのはその3年後のことだった。小説の語り部はすべて子供である。なのに何度も涙ぐんだのは、歳のせいであろうか?

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2023520日)


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