ロシアがロシアを爆破する(共著:リトヴィネンコ、フェリシチンスキー) [読後感想文]
ロシアがロシアを爆破する(共著:リトヴィネンコ、フェリシチンスキー)
邦訳の題名は『ロシア 闇の戦争』。しかし、これでは何のことか要領を得ないが、ロシア語原題は『ФСБ взрывает Россию(ロシア連邦保安庁がロシアを爆破する)』と言うのだから、<ロシアの保安を司る中央省庁(旧KGB)自らがロシアを爆破する>となり、これはただ事ではない。本書は、1956年にロシアに生まれ1978年に米国に移住した歴史学者フェリシチンスキーと、1962年生まれのロシア人でロシア連邦保安庁職員の時に英国に亡命した(2000年)リトヴィネンコの共著。但し、ロシアでは禁書扱いのため2002年以降ロシア以外の約20ヶ国で出版されている。
本書は、1999年8月~9月にロシア各地で発生したアパートの爆破テロ事件(5ヶ所、死傷者681人)は、噂のチェチェン人のテロリストによるものではなく、実はFSB(ロシア連邦保安庁)自身による偽装テロであって、目的は第2次チェチェン紛争(1999年8月~2009年4月)を誘発することにより国民の危機意識を高め、もって2000年春の大統領選をFSB(ひいてはプーチン)に有利に展開しようと目論んだものであることを告発したものである。至る所にロシアのいろんな都市や施設名、FSB他省庁の関係職員名が暴露されており、老化した脳味噌にはとても処理しきれないほどである。
1999年8月と言えば、無名に近いプーチン(FSB長官)がちょうどエリツィン大統領により首相に抜擢された直後であり、その4か月後の12月にはエリツインの引退に伴って大統領代行に就任した時期に当たる。
告発内容が余りにも凄まじく、且つ錚々たる顔ぶれを目にすると、つい空恐ろしくなり、ために180頁から先は拾い読みに切り替えたが、ここに書かれた内容が事実なのか、未だに半信半疑の状態である。
なお、著者の一人リトヴィネンコは3月29日付投稿「ザ・プーチン 戦慄の闇」に記載した通り、2006年11月亡命先のロンドンで何者かにより放射性物質ポロニウム210により毒殺された。その直前の10月にはモスクワで、チェチェン紛争で批判的な記事を書き続けたロシア女性アンナ・ポリトコフスカヤが自宅アパートのエレベーターで、これも何者かにより射殺されている。おお、怖わ!
(2023年5月8日)