2023年春爛漫(胴吹き桜) [巷のいのち]
2023年春爛漫(胴吹き桜)
あの日(3月22日)、石神井川に沿う百万石の桜みちを歩いていて、頭上に乱れ咲く花よりも、太く黒ずむ幹からじかに芽吹く僅か数輪の花の方になぜか目を奪われていた。気になって調べてみると、どうも老い桜がなけなしのエネルギーでもって光合成を急いだもののようで、この手の桜花は『胴吹き桜』と呼ばれるらしい。奇妙なのはこれが目に付くようになったのは、つい昨年あたりからのこと。日本は今頃になると、老若様々な桜木が覇を競う。胴吹き桜とて昔も今も変わらぬはずが、なぜ今になり我が目を奪うのか、そこを不思議に思う。深まりゆく我が齢と、まさか関係はあるまいに。
(2023年4月4日)