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貴様と俺とは同期の桜 [忘れ得ぬ人々]

貴様と俺とは同期の桜

 昨日は秋の夕べ、高田馬場のへぎそば昆に集まった老兵4人は、56年前一つ商社に入社した同期の桜。うち3人は保谷(現・西東京市)の独身寮で寝食、遊びまで共にした老朋友同士、残る1人は寮は別でも60年前、大学のロシア語教室で机を並べた古友中の古友である。

 歳深まるにつれ疎遠になるのは世の常、ましてコロナ下のこの3年は滅多には会えなんだ仲間と酌み交わす酒は、まるで臓腑に沁み入るような味である。同期の桜ではあるが、酒に麻雀にと互いを求め合ったのは、新入社員の頃だった。そのうち一人が香港に去り、二人目がモスクワへ、或いはブラジルというように、散り散りにばらけて時が過ぎ、気が付いたら還暦を過ぎていて、漸くあいつどうしてるかと互いを探し求めたものだった。

 不思議なのはこの日座って最初の内こそ、腹を切ったの、前立腺癌をどうのと言い交わし、齢は争えんと言い合っていたものが、杯を重ねるにつれ何だか互いの顔が若返り、ついには知り合った頃のように見えてくる。こりゃ、やばい、と誰かが思ったのだろう、そろそろお開きにしようと言い出すと、昔と違って、ぐずる者などいなかった。

 帰りの電車に座った時、ふと思い出す、今日の宴には伏線があったことを。半月前のことである。I君からラインで、たまには集まりませんか?との提案を受けた、僕が頻りにボヤいているからと、齢を取るとはこういうことか、とか何とか言って。驚いて探すと、その前日の投稿『地球が段々虚ろに見えて』の中で書いていた、「この3年半、数えてみれば人様との付き合いが激減して久しい。それをコロナのせいにしていたけれど、齢を取るとはそういう事なんだ」と。そして次のように締め括っていた、「知り人との出会いが絶え、馴染みの店も次から次へと消えて行く。地球が、なんだか段々虚ろに、虚ろに見えてくる」。

 電車と酔いに揺られながら思った、友よ、有難う。

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20231027日)


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