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ヒトラーの真実(福井義高) [読後感想文]

ヒトラーの真実(福井義高)

 本書の原題は長い。『教科書に書けない グローバリストに抗した ヒトラーの真実』とはどういう意味だろう?実は最初見当もつかなんだ。読み終えて初めて腑に落ちた。ヒトラーは決して世界制覇を目論むようなグローバリストではなく、ただ自国ドイツの幸福を追求したに過ぎない。危険なグローバリストは寧ろ世界の共産化を狙うスターリンや、偏狭な自由民主主義に凝り固まり、親露的でもあったフランクリン・ルーズベルトやチャーチルの方だった。驚いた、第2次世界大戦を惹き起こした筈のヒトラーを擁護し、正義の味方の筈の方を(けな)すとは!

 しかし妙なのは、読み進むにつれ、ヒトラーのドイツ(人)が段々可哀想に思えてきたことである。本書の舞台は、二度の世界大戦の狭間のドイツを中心とする欧州で、それはちょうどヒトラーが権力の座に上り詰める時期に相当する。第1次大戦に負けたドイツ側に余りにも過大な賠償金が課せられたことが、第2次大戦を呼び寄せた要因の一つであった、とまでは聞いたことがある。だがこの本にその先を教えられた、賠償金はヒトラー政権の時期こそ支払いが拒否されたが、第2次大戦終了後に支払いが再開され、完済されたのは2010年。ということは、何と百年近くかかって完済されていたのだ。

 第1次大戦の結果ドイツ(人)が蒙った悲劇は(知らなんだのは僕だけかも知れないが)、膨大な債務に留まらない。少なからぬ領土と住民(殆どがドイツ人)が隣国のフランス、ポーランド、チェコスロバキア等に割譲され、その殆どが今も変わらぬ状態にあるのだ。この領土問題こそが、ドイツを再びの戦争に追いやった主因と思われる。現に第2次大戦は、ドイツによるチェコのズデーデン地方併合の後、ポーランドへの侵攻に端を発した。

 本書は、第2次大戦開戦前夜の、風雲急を告げるところで終わっている。仮にもし、いのちある間に続編が出たならば、訪ねてみよう図書館を。

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20231018日)


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