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諜報国家ロシア [読後感想文]

諜報国家ロシア

 ウクライナ戦争が続くこの1年半、同戦争を論ずる本を幾冊も読んだ。その大半はロシアの非を詰る論調だったが、中にはアメリカ又は国際金融資本こそ蔭の仕掛人とする論者もあった。本書の主題はロシアの諜報の歴史だが、最後の第6章をこの戦争に割いており、著者・保坂三四郎の立場は明らかにロシアに批判的である。

 著者は「あとがき」の冒頭で語り始める、「本書は、なによりも自分のために書かれた」と。怪訝に思い先を読むと、若い頃モスクワへ留学、ロシアにかぶれて帰国、その後外務省の仕事でロシアに出張の折、ロシア人と何度も乾杯したこと、そしてその頃はプーチンにも心酔していたことを。だが、そのうち違和感を覚える現象や情報に接し、それまでロシアを通して視ていた視座が徐々に変わってきたと打ち明ける。結果として彼の見立てでは、ロシアはウクライナを数世紀にわたり「兄弟民族」と呼んで併合・同化政策を行ってきたが、その実ウクライナのことをほとんど知らない。逆に、ロシアに対して激しく抵抗し、独立運動を繰り広げてきたウクライナ(人)は、ロシアという国や人々を最も肌身で知っている。

 この本は、しかし今を去る百年以上前に帝政ロシアが滅び、ソ連という赤色帝国が誕生した時に同時に生まれた強大な国家諜報システムが、チェーカー → NKVD(内務人民委員部) → KGB(国家保安委員会)等名称を何度も変えながら、ソ連崩壊後もFSB(ロシア連邦保安庁)として復活し、国家を牛耳って来た様を詳しく弁じるものだけに、僕には過ぎたるレベルだった。著者には申し訳ないが、部分的に読み飛ばすことも余儀なくされた。

 この本に指摘され、初めて気がついた、ソ連が崩壊する6年前ゴルバチョフがペレストロイカを推進し、政治、経済、軍部にも改革の波が及んだが、ひとりKGBのみにはメスが入らなかったことを。そして1991年、ついにソ連が崩壊した時、ソ連から解放されたバルト諸国や東欧で秘密警察が廃止されたにも拘らず、ひとりKGBは生き残ったことを。

 KGBは生き延びた。のみならずKGBの組織で育った人がロシア第2代の大統領に昇りつめ、その政権は実質23年に亘ろうとしている。のみか来年は、更なる再選が起こりそうな気配である。

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2023102日)


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