遅れて来たセミ [巷のいのち]
遅れて来たセミ
昨日11月8日の夕まだき、学童帰宅パトロールのため小学校の校庭に侍る。整列した学童を前にして若々しい女の先生の声が響く、「今晩は大変珍しい皆既月食があります。6時位に欠け始め、8時頃に終わります。良かったらおうちでご覧下さいね」。
パトロールを終え帰宅したら6時半を過ぎていた。先生の言葉を思い出し、アパートのベランダ(9階)に出てみると、確かに月が少し欠け始めている。スマホをかざし、拡大して写真を撮るも、余りに遠過ぎてうまく撮れない。
だが足元の何かが視野に入ったので、拾い上げたら何とそれはアブラゼミ。圧してもピクリともしないので、魂は既にここには無いけれど、整ったその姿かたちと手に触れる感触からすると、どうもさっきまではこの世にいたようだ。
しかし解せない。今年は9月も中旬を過ぎると巷からはセミの声が絶え、代わりに秋の虫が鳴きだした。今ははや11月、昔で言えば霜月だ。セミは地中に生まれ雌伏7年、恋を成就するため地上に這い出て7日生きるというのに、今頃いったい何のために現れたというのか?
明くる朝の朝刊で知った。昨晩の皆既月食は唯の皆既月食ではなかった、同時に天王星食をも伴ったのは実に442年ぶりのことらしい。ふとあのセミを思い出し、これを見に来たのかと思ったが一瞬後、まさかなあと打ち消した。
(2022年11月9日)
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