奥多摩の秋(鳩ノ巣渓谷) [関東低山紀行]
奥多摩の秋(鳩ノ巣渓谷)
「大多摩ウオーキングトレイル」は白丸湖ダムの堰堤を過ぎると、鳩ノ巣渓谷に変わりJR青梅線鳩ノ巣駅下の雲仙橋まで続く。川辺に奇岩が犇めくため、ここでは多摩川の流れが極端に狭くなり、切り立つ崖にモミジが紅く燃えていた。
鳩ノ巣とは異な呼称だが、その昔ここの岩場の上に立つ玉川水神社に巣を営んだ雌雄の鳩がことのほか仲睦まじいために、いつかそんな地名が付いたという。鳩と言えば雀同様、このコロナ時代の2年近く、日々の老々散歩の中でその姿を見掛けない日は滅多になかった。人様に対する警戒心など極端に薄く、我が足元近くまでヨチヨチ寄って来ては、餌を探している。その鳩を、人里離れた山などで見掛けないのは、きっと人との共生を選んだからだろう。人間の近くにいれば多分餌が豊富なうえ、天敵が寄って来難いという安全保障まで見込んだからに違いない。
だがよく分からない。フランスには鳩料理があるようだし、鳩を食べないのは日本だけだと聞いたような気もする。まして四つ足なら机椅子と、飛ぶものなら飛行機以外はすべて食すという中国では、鳩はのこのこ公園をうろついているのだろうか?
先日老々散歩の帰り道のこと、信号のある横断歩道の反対側に鳩が見えた。信号が青から赤に変わったころ鳩が車道に踏み入ったと見るや、あっという間に轢かれて声もなく骸になっていた。いくら人間との共生を選んだとしても、交通規則まで覚える訳にはゆくまいが、あの光景は今も記憶の底に残ったままである。
話がえらく脱線したが、鳩ノ巣渓谷を過ぎた所で電車の移動に切り替え、鳩ノ巣駅に向かった。御嶽駅で降りて御岳渓谷の紅葉を見ようと決めたからだった(続)。
(2021年11月16日)
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