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ぬい女物語(その2) [読後感想文]

ぬい女物語(その2)

 

 『下々の女(江夏美好)』もそうだったが、この『ぬい女物語(小鷹ふさ』も随所で飛騨の方言に出遭う。山だらけの飛騨は方言もばらばら、まして世代を隔てる古い方言は見慣れぬものも多い中、忘却の彼方から浮かび上がるものもある。何十年も忘れていたのは、例えば「へんび」(蛇)、例えば「どんびき」(蛙)、それらは物心がついて初めて聞いたり、喋った言葉だった。「いかいこと茄子(なすび)を作って天秤棒で担って売りに出た」とあった。「いかいこと」は沢山という意味だった。調べてみると意味はその通りでも、静岡弁と注釈が付いている。けど、飛騨でも昔はそう言っていたのだ。

 こんな文章に出遭った、「夫に一文の収入もない農家の嫁にとって、石けん、手拭いは有難い戴き物であった」。何ともない、普通の文章、なのに突然、長い間忘れ果てていた祖父を思い出した。僕が生まれた時60歳を越えていた祖父は、来る日も来る日も農作業に精を出していたが、それは家族に食わせる物を作っていたからで、収入はゼロだった(現金収入は、ひとえに父に対する特定郵便局からの給与に頼っていた)。ひょっとして、祖父には財布も無かったのか?一瞬胸に浮かんだ疑問を、しかし今更詮無いことをと呑み込んだ。

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 先日は1125日の土曜、ちいさい秋が気に懸かりまたぞろ後楽園の礫川(れきせん)公園を覗くと、サトウハチローが文京区弥生に住んでいた頃は小さかったハゼノキが、すっかりでっかい姿になって、まるごと紅色に燃えていた。秋はもう直ぐど真ん中!

20231128日)


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