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78歳の手習い [読後感想文]

78歳の手習い

 今度読んだ『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(鶴岡路人・著)は、生まれて初めて読んだ安全保障の本だった、すると、集団安全保障とか集団的自衛権或いはNATOとかいう言葉は、今度のウクライナの戦争でなくても、しょっちゅう見聞きしていたので何となく分かっているつもりだっのに、実はな~んも分かっていなかったことに気付かされた。

 人生これまで、ずっとノンポリをやって来た。一度だけデモに参加したことは、ある。上京して学生になって間もない時だから頃はまだ未成年、誰かに誘われ、国会前を練り歩いて「ベトナム反対!」を叫ぶ群れの中に居た、何が何だか、さっぱり分からぬままに。以来政治らしきものに係ったことも無い。

 今度のウクライナでは、ロシアの侵攻直後先ず目にしたのは、宣戦布告さながらのプーチンの演説だった。そこには、ソ連崩壊後NATOが東に向かって加盟国を次々に増やし、ついにはウクライナまで取り込もうとしていると、NATOに対する恨み節に満ちていた。それを読んだ時、NATOももう少しロシアのことを慮っていたなら、こんなことにはならなかったのではないか、と思ったものだ。その後、しかしロシアの非情な行動を見聞きするにつれ、プーチンの恨み節に対する疑念が徐々に湧いて来た、・・・・そんな時に出遭ったのがこの本である。

 著者は語る、NATOが旧東欧、旧ソ連内共和国からの加入申請を受けた時、何よりもロシアの反応が心配されたので、都度ロシアと協議の上、「手打ち」がなされたと。先ず1999年のチェコ、ポーランド、ハンガリーの加盟に際しては、事前の協議に基づき1997年、NATO・ロシア基本議定書が合意された(ロシアはエリツイン大統領の時代)。次いで2004年、バルト三国、ブルガリア、ルーマニア、スロヴァキア、スロヴェニアの加盟も、2002年ローマにおける両者の合意に基づいて実施された(プーチン大統領の時代)。かかる経緯を踏まえれば、プーチンの恨み節は根拠を欠く非論理的なものに思えてくる。

 本書の中で最も印象的だったのは、上記のNATO拡大問題に関するプーチンの恨み節であったが(それが自身の心の片隅に燻っていただけに)、他にも心に残る箇所がいくつもあった。うち二つを紹介したい:

(1)13頁:結果として、多くのウクライナ人を反ロシア的にした。(中略)プーチンは、自ら作り出した敵と戦っている。ロシアによる一連の言動が、ウクライナ人のアイデンティティを高め、ウクライナ国家を欧州寄りにさせてしまったのは、今回の戦争の最大の皮肉である。

(2)133頁(ストルテンベルグNATO事務総長発言):(ロシアの侵略を止めなければ)我々はみな、より危険になる。(中略)我々はコストを負担し、EUとしてNATOとしてコストは金額であらわされ、お金の問題だが、ウクライナ人にとってのコストは、日々、人命で支払われていることを忘れてはならない。

 ウクライナ侵攻の直後、それまでEU加盟国ではありながら軍事的には中立を国是としていたフインランドとスウェーデンがNATO加盟を申請、このうち先ずはフインランドが一昨日の44日、正式に31番目の加盟国として承認された。恥ずかしながら我れ、EU27ヶ国とNATO31か国の内訳を知らず、ために今日、78歳にして初めてそれぞれの国名を手帳に書き留め、両グループ共に加盟している国には〇を付した。

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202346日)


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