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プーチニズム(その2) [読後感想文]

プーチニズム(その2

 

 今世紀初頭、約20年前のロシアに生きていた著者ポリトコフスカヤ(ウクライナ人の女性ジャーナリスト)は、彼女の目から見て当時ロシア社会の各界を蝕んでいると思われた病巣を摘出、英国で『プーチンのロシア』を出版、世に問うた:

【政界】プーチン大統領就任後、KGB出身者6000人以上がロシアの最上層部に犇めくようになった(ソ連時代への回帰)。

【財界】国営企業の民営化に伴う破廉恥な億万長者の出現(権謀術数による乗っ取り、汚職の蔓延)

【軍隊(特に上層部の将校)の堕落】①チェチェン人は悪者だからすべて殲滅すべきという空気②民間人に対する残酷な振舞⓷軍人は法の埒外に置かれ、重罪を犯しても不起訴となる傾向

【司法】司法は実体として独立しておらず、ただ政治家にへつらう存在でしかない(ロシア人将校によるチェチェン女性強姦・虐殺事件等、多数の証言を紹介)

 

 文中、刮目した点多々あるが、そのうちの三つを紹介すると:

    180頁:本当に不思議だ。共産党が倒れてもうずいぶんになると言うのに、昔の習慣がまだそのまま残っている。(中略)国のために誠実に働く人に感謝することを政府は学んでいない。一生懸命働いているか。そうか、よろしい。そのまま続けよ。くたばるまで、心が壊れるまで。(中略)ロシアにとって共産主義が貧乏くじだったのはたしかだが、現在はそれよりひどい。

    355頁:プーチンは一部の人間の所業に対して民族全体が責任を負うべきだと信じている。そしてロシア人の多数派はこのプーチンの考えをもっともだと思う。しかし、わからないことがある。もう何年も続く戦争にもかかわらず、テロ行為にもかかわらず、大惨事や難民の波にもかかわらず、当局がチェチェン人から何を得ようとしているのか。それが誰にもわからない。彼らはチェチェン人が連邦内に留まることを期待しているのだろうか。それとも、そうではないのか。

    360頁:(弊注:モスクワの学校に通うチェチェン人の子供が学校で苛めを受け、保護者会のロシア人の親たちもそれを当然視する事例について)二十世紀に、これと同じように始まったけれど、異なる結末をもつある出来事を思い出してみよう。ファシストがデンマークに侵攻したとき、すべてのユダヤ人は着ているものに黄色い星のワッペンを縫い付けるように命令された。そうすれば、すぐに見分けがつくからだ。するとデンマークの市民は誰もがただちに黄色い星を縫い付けた。ユダヤ人を救い、自分たちもファシストにならないために。国王も国民の行動を支持した。しかし今日のモスクワの状況はこれとは正反対だ。当局が私たちの隣人であるチェチェン人を虐待したとき、私たちは彼らを助けるために黄色い星を縫い付けはしなかった。あろうことか、私たちはこれとはまるで逆のことをした。

 

日の短い冬場限りの学童帰宅パトロール稼業も2月末をもって終了した。パトロール3回目の冬だったが、この冬は風がめっぽう強かったので老骨には一番堪えた。そんな中、しかし梅が咲き始めた。写真の赤いのは我がアパートの庭の、白いのは学童集う学び舎の。 『梅一倫 一輪ほどの 暖かさ(服部嵐雪)』

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202333日)


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