SSブログ

愛犬クロ物語(ラーゲリより愛を込めて) [読後感想文]

愛犬クロ物語(ラーゲリより愛を込めて)


 


 友に紹介されて観た封切り映画『ラーゲリより愛を込めて』(ジャニーズの二宮和也主演)の感想を投稿した数日後、その友から問い合わせを受けた。曰く、自分も思わず涙を誘われたシーンがあったけれど、愛犬クロが絡んだ部分は原作『収容所から来た遺書(辺見じゅん)』にありましたか?余りにもでき過ぎているので、クロそのものが映画の脚色のようにも思えますが?・・・・言われてみれば、確かにでき過ぎの感はある。強制労働の作業現場で捨て犬と出遭った戦犯の囚人が子犬をこっそりと持ち帰り、ただでさえ不十分な割り当てのパンを分け与えながら囚人達が育てた?ついに帰国の決定が出るや、クロと別れ、ハバロフスクから800キロ(列車で12時間)離れたナホトカ港に着く。そこで乗り込んだ帰還船の興安丸が錨を揚げ出航した直後、真冬の海に跳び込んで後を追うクロ?・・・・。


 いま偶々、別の友の紹介で『ダモイ遥かに』を読んでいた。これは辺見じゅんが『収容所から来た遺書』を著わした19年後、改めて同じ山本幡男(はたおを主人公に世に問うたノンフイクションである。こでも、しかも冒頭からクロが登場、そして終章、ナホトカ港で興安丸に助け揚げられたクロは、最後の抑留者1025人(その中には、2年前に病死した山本幡男の遺書を記憶に刻み込んで運ぶ6人もいた)と共に海を渡り舞鶴に着く。


 映画『ラーゲリより愛を込めて』は、辺見じゅんの2冊(『収容所から来た遺書』、『ダモイ遥かに』)に基づいて制作されているようだ。それにしても、愛犬クロの部分はやっぱり話ができ過ぎていると思い、ネットで検索してみたら、あるわ、あるわ、ハバロフスク収容所での抑留者と黒犬との触れ合いの写真や、氷の海で船員が黒犬を救出する写真やら証言の数々が。例えば、 


(中)心支えた捨てクロ」 : 戦後60年 : 企画・連載 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) (itscom.net)


 


https://ameblo.jp/hayonipiiku-go/entry-12541282761.html


 


ここまで見て来ると、シベリアの日本人抑留者に愛され、最後の帰還船に同乗して舞鶴の土を踏んだ黒犬がいたことは、どうやら否定し難い事実と思わざるを得ない。だからと言ってその犬に、小説と映画が描くような山本幡男との直接の出会いがあったかどうかは分からない。分からないけど、友よ、それ以上の詮索はやめようと思う。


ナホトカからの最後の引き揚げ船・興安丸が京都の舞鶴に着いたのは、1956年(昭和31年)1226日だった。ハバロフスクの収容所でクロと寄り添い合って生きて来た者達も、11年の抑留の末に辿り着いた祖国でどんな人生が始まるのか見当もつかなかったことだろう。クロは舞鶴の長木市議会議員に引き取られ、その地で天寿を全うした。『ダモイ遥かに』の最後の頁は語る、「クロは舞鶴の海の見える丘の地に埋葬された」と。


 IMG20230127111523.jpg


 IMG20230127111403.jpg


2023127日)


 


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。