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僕の内なる太平洋戦争(日米開戦) [読後感想文]

僕の内なる太平洋戦争(日米開戦)

 ついこないだまで(ということは80年近くも)思い込んでいた、大日本帝国の陸軍は、頑迷で威張り腐って非合理的、一方の海軍は、開明的で闊達だと。それは長年にわたりいつの間にか培われた固定観念のようなもので、司馬遼太郎の歴史小説でもそのように描かれていたし、今からは半世紀前の職場で出遭った陸士出身の上司は強面が多く、海軍出身者はハンサムで優しそうに見えた。こんなことがあった。入社一年目、連日の深夜残業のためある日食堂で夜食を済ませたあと席に戻ると、部長に呼ばれた。どこに行ってたのかと訊かれたので、答えたら、あのなあキミ、会社は飯食いに来るとこじゃないぞ、とバッサリ。部長の別名は鬼の田村、陸軍士官学校最後の卒業生だった。

 この本『日米開戦 陸軍の勝算』(林 千勝)を読むうち、そんな僕の思い込みにヒビが入り、読むにつれ大きくなって、ついには崩れ落ちそうになっている。今に残る帝国陸海軍の文献を渉猟し尽くしたと自負する著者が断言するのだ、陸軍はアメリカと戦ったら必敗なので対米戦を避け、蘭領インド(今のインドネシア)から西の大東亜圏に戦域を限定しようとした。海軍とて大方の考え方は同じだったが、時の連合艦隊司令長官の山本五十六(いそろく)は違った。彼は、真っ先に太平洋を東に進み、米国海軍の本拠地を叩いてぎゃふんと言わせ、戦意を挫いたところで早期停戦に持ち込む、それしか勝機は無いと強く主張したため、ついにはあの真珠湾攻撃となった。ところがこの真珠湾が米国民に真逆の反応を惹き起こす。(第1次大戦に参加したばかりに25万人以上の死傷者を蒙った反省から)政官民挙げて他国間の戦争に不参加の意向を示していたアメリカの世論が、真珠湾を攻撃されると、ぎゃふんとなるどころか寧ろ逆上、日独伊撃つべしとの大転回が起こった。

 本書をここまで読んで、ぎょっとした。アメリカにまったく戦意が無かったなんて聞いたこともない。じゃあ何で資源の無い日本に石油以下の全面禁輸を課したのか?それに、陸軍は非合理かつ頑迷ではなかったのか(鬼の田村のあの言葉は、もしかして「頑張れよ」という励ましだったのか)?首をかしげる我だった。

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2023925日)


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