紅蓮の秋(名主の滝公園) [巷のいのち]
紅蓮の秋(名主の滝公園)
名主の滝公園を訪れたのは師走も2週目が終わる頃、だからモミジの秋には遅れたと思った。そして門を潜って見渡すと、そこかしこ目に入るモミジ葉は案の定どどめ色に黝ずんで、中には干からびて今にも落ちそうなものもある。小川沿いに歩を進めてモミジを通り越し、ふと振り返ったとき息を呑んだ。さっきの老いたモミジが陽を背負って紅に燃え盛り、萎びかけていた葉も青空に点々と咲いている。そのモミジはまた一木毎に姿も色も千差万別、四阿のそばでは、南天の実と赤を競い合っていた
名主の滝公園の秋は今がきっと千秋楽。モミジや銀杏の千両役者が揃い踏み、ある者は大団円で見得を切り、ある者は断末魔の叫びをあげる。・・・たった一人の観客には勿体ないほどに贅沢な、晩秋の出し物だった。
(2022年12月14日)
コメント 0