ウクライナ酔夢譚 [読後感想文]
ウクライナ酔夢譚
『ウクライナ侵攻に至るまで』(副題:誰も知らないウクライナの素顔)—-タイトルに惹かれ読んだ本である。てっきりルポルタージュかと思いきや、日記風の小説だった。著者・小野元裕は日本ウクライナ文化交流協会会長で、ウクライナに入れ込み、ウクライナ全域を取材で廻ったという。日記のスタートは、2013年末—ちょうど通称マイダン革命と呼ばれるウクライナの第2次市民蜂起により、親露派のヤヌコービッチ大統領がロシアに逃亡した頃で、直後にロシアがクリミア半島を力で捥ぎ取り、ウクライナ東部(ドネツク州、ルガンスク州)の親露派勢力を幇助し始めた時期に当たる。
日記はその後8年の間に、ロシアとウクライナの間で起こった様々な出来事を綴り、最後は今年2月24日、ロシアが国境を越えてウクライナに攻め込んだところで終わっている。
形式は日記風な小説でも、過去8年にわたり著者自らが見聞した事実やウクライナの知人から入手した情報がベースになっているので、実質はルポルタージュと同じだろう。お蔭で現在進行中のウクライナ戦争の背景について、教えられることが多かった。中でも特に印象を受けたのは、今年2月にロシアが攻め込んだ、その8年も前から、東部がすでに戦争状態にあったことだ。
例えば8年前の2014年7月に、アムステルダム発クアラルンプール行きマレーシア航空ボーイング777がドネツク上空で地対空ミサイルにより撃墜され、乗客乗員298人全員死亡という事故があった。そのミサイルは、ロシアが親露派勢力に供与したものというのが大方の見方である。
例えば7年前の2015年6月に、日本のトップとして初めてウクライナを訪れたのは誰あろう、先般凶弾に斃れた安倍晋三(当時の首相)であった。いずれもそれらの報道には当時接していたはずなのに、その頃東部地域がすでに戦争状態にあるとは露知らず、ためにそんな事実が記憶に留まることはなかった。
連日茹だるような暑さの中、蝉ばかりが元気一杯、恋の歌を歌っている。散歩の途中、ベンチの下で休むアブラゼミと目が合った。歌い疲れたのか、ジジとも鳴かない。恋は、きっと成就したに違いない。
(2022年8月4日)
«Карамазовы», которых я тоже начал читать два года назад из-за коронакризиса, остановились на 710-й странице и дальше не продвинулись.
by Влман (2022-09-04 11:05)