池井戸潤の世界(半沢直樹4) [読後感想文]
池井戸潤の世界(半沢直樹4)
茹だるような暑さの中、黒傘差して墨田川畔に上がったら、先日紹介した島百日紅がずいぶん花を増やしてますます元気に立っていた。かんかん照りの中で見得を切る、まるで千両役者のようだった。
半沢直樹の4巻目は「銀翼のイカロス」。日本の代表的な航空会社(ナショナル・フラグ)の経営破綻を背景に、今回正義の味方半沢(銀行マン)が戦う相手は、折しも長期政権を打倒した革新政権の悪漢政治家と取り巻きの悪徳弁護士。読者はついつい、12年前の自民党から民主党への政権交代と、同時期に起こったJALの経営破綻を連想する。悪漢政治家の一人はマスコミ出身の美人政治家。読者の連想は続く、何だか小池百合子のようだが、いや蓮舫か?
厳しい戦いの中ほどで作者は語る:「半沢は、静かに怒りを噛み締めた。『たとえ相手が政治家だろうと、関係ない。この際、きっちり片を付けてやる。―やられたら、倍返しだ』」。そして土壇場で、敵をまとめて論破し叩きのめす。倍返し?・・・不覚にも僕は知らなんだ、9年前の2013年、この言葉が流行語大賞に選ばれたとは。
とにかく、善玉が悪玉どもを倍返しでやっつけるチャンバラ劇は実に痛快。この世はそれほど単純ではないけれど、たまにはいいか、そんな夢、百日紅さえ見得を切るこの夏は。
(2022年7月29日)
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