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九死に一生(日の出山) [関東低山紀行]

九死に一生(日の出山)

 

  この命が、今回ほどにヤバかったことはなかった。この日の山歩きは、4回目の緊急事態宣言下、さすがに越境は躊躇されたので、都内は多摩の日の出山(902m)を目指したのだが、440分発の始発電車に乗り込んだ時、その先にとんでもない危険が潜んでいようとは思いもよらなんだ。

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  JR青梅線の日向和田駅から7時前に歩き始めて、吉野梅郷の先から山道に入り、普通の人なら3時間の所を、ゼイゼイ喘ぎまくって5時間後にやっと日の出山の山頂に着いた。経年劣化し尽くした体は、この時点で既にがたがたである。

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  しかし目論見があった。そこから常人の足で1時間15分ほど下ると「つるつる温泉」がある。そこのアルカリ性の湯に入ればきっと疲れも吹き飛んで、爽やかな気分で武蔵五日市駅行きのバスに乗れるのじゃあなかろうか?てなことを考えながら下り始めたのだが、その下りがいつになくきつくて、足にこたえる。そして、2時間も下ったろうか、ある一歩を踏んだ瞬間、何が起こったのか、突然体が宙に浮き、崖のような所へ落ちて行く。これが最後なのか?一瞬そんな思いが頭をよぎる・・・。気が付けば、垂直に近い山肌を滑り落ちて、小さな枯れ藪のようなものに辛うじて留まっていた。その下は切り立つ山肌が数十メートルも下へ落ちている。

  呼吸を整え、見上げると道の端が見えた。ゆっくりと攀じ登り始める。細い木が立っている。握ってみて、すっぽ抜けないことを確かめてから、身を引き上げる。じりじりと上がり続けて、やっと道に跳び戻った。そして、落ちたと思われる辺りをよく見ると、道を横切る黒いラバーシートが目に留まる。ラバーシートが滑りやすいことは経験上知っていたのに、今回は何故か目に入らなかった。外傷は無いようだが、首から肩にかけて息が詰まるような痛みがある。

  その後、なんとかたどり着いたつるつる温泉では、首まで湯に浸かりつつ、この胸から背にかけての痛みのようなものが和らぐことを願う。九死に一生を得たばかりなのに、はや贅沢なことを望むのだった。 

2021828日)
 


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