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ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか [読後感想文]

ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか

 ウクライナ戦争の関連本にまた手が伸びた(病鴻毛に入る、それも仕方ないと諦めた)。著者兼編集者の高橋杉雄はウクライナ関連テレビ番組でこの1年以上、毎日のように見掛ける顔、他の3人の執筆者を含め全員がウクライナや欧州地域に特化した専門家ではなく、いずれも国際安全保障問題の専門家である。この分野でもド素人の僕には過ぎたる本であったが、印象に残った点など感想交じえ記したい。

 1991年にソ連が崩壊した後に生まれ出たロシアは、我が国と同じような普通の民主主義国家になったと思ったら、違ってた。選挙があるから見た目は日欧米と似ているが、実は現下の指導者が三権の国家機関やメディアを恣意的に操る、公正な選挙が事実上不可能な体制となっており、これを「競争的権威主義(competitive authoritarianism)」の国家と呼ぶという。言われて初めて、これまでいくつか不可解に思っていたことが腑に落ちた。

 ウクライナ戦争はこれまでにない戦争の形態(3段階の組み合わせ)をとっている。即ち、ロシアによる平時の①「情報戦」(ウクライナの政権はネオナチ政権とのメディア、SNSを使った偽情報の拡散)②「サイバー戦」(相手国ネットワークのIT機器の無力化により継戦能力を削ぐ)③通常の「軍事侵攻」。上記のうち最初の「情報戦」は、平時にウクライナ以外の国に於いても発生しているそうで、昨年日本の省庁、金融機関、地下鉄等で起こったアクセス障害は、ロシアのハッカー集団による可能性が高いことが示唆されている。

 ウクライナ戦争の早期終結について、編者の高橋杉雄は悲観的な見方をしているが、それはプーチンの戦争開始目的が「欧州に行こうとするウクライナをロシアに取り戻す」というアイデンティティの問題であるからと言う。そうである限り、たとえウクライナがロシア軍をいったんは自国領土外に駆逐したとしても、プーチンのロシアはいずれ再び隙を窺って攻め込むだろうからと。だとすれば、兄弟国とは何と因果なものなのか。人間同士なら、たとえ血を分けた兄弟でも、望むとあれば敵に走るのを許そうものを。だがもし男女なら、と思いかけ、はたと思考を停止した。阿部定と言う名前が脳裏を掠めたからだった。

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 今年の夏は暑い。今日も35度Cを越えている。なのに何故かセミの声が聞こえない。写真は5日前、アパートの廊下で見つけたミンミンゼミ。声も無くただ蹲っていた。

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【追伸】と、ここまで書いて炎天下汗だくで本書を図書館に返して戻って来た途端、アパートの庭でミーンミーン、今年の初鳴きはミンミンゼミだった。生まれたばかり、おずおずと躊躇うように。

2023716日)


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