スマホ人生(その1)


  スマホをいつから持ったのか、もはや確たる記憶も失せているけれど、爆発的に普及し始めたのが2009年ということは、既に高齢者に仲間入りしていたことは間違いない。しかもその後の機能の進化が多面に亘り且つ凄まじかったために、メカにさえ弱い老人はなんとか見よう見真似で使ってはいるが、触れ得る機能はほんの一部だけ、あとは宝の持ち腐れのまま後期高齢の道標も越えて4年が過ぎた。


 そして今、気が付いたら己が日常はスマホの天下。朝スマホに起こされると、アラームを解除して画面に目を通す(誰かからメールかラインが来てないか?フェイスブックの投稿に「いいね」やコメントが来てないか?)。今日の天気もスマホに訊けばよい。


 都会のアパート暮らしは、隣は何をする人ぞ?まして4年前、最後の職場を去ってからは世間との接点も喪失、家族以外と接触する機会も滅多には無くなった。遠い故郷との親戚付き合も、母亡きあとは絶えてない。例外はある。幾星霜を経て今に残る、一握りの、ほんの一握りの友人たち。年ふるにつれ彼らとの出会いもまた激減する一方だが、スマホあればこそメールやラインで互いの消息を確認し合うことができる。


てな調子で一事が万事、家の中でさえスマホを離さない。着信音を耳にすると気になって、すかさず開いて確かめる。開いても、大抵は何で鳴ったか分からない(知らない機能のいずれかが反応したようだ)。東京も今こそ春爛漫、桜は散って葉桜になったが、今度はツツジが咲き始めた。アパートの庭に咲き出した花は、いずれがアヤメかカキツバタ?翳したスマホの言うことにゃ、アヤメだとさ。


 



2024419日)